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東武鉄道8000系
電気工学科 1年 6152番 Y.M
1. はじめに
東武鉄道8000系(以下8000系)は、1963年(昭和38年)から1983年(昭和58年)の20年間に、合計712両が製造された、東武鉄道を代表する車両である。1系列で712両は国鉄(JR)103系(以下103系)を除いて、私鉄では最多両数である。あらゆる仕様変更や改造がなされ、実に数多くのバリエーションの編成が存在していたが、近年、東武鉄道では新型車両の導入が進んでおり、淘汰が進んでいる。
今回はそんな8000系について解説していく。
写真1 春日部駅に入線する8000系
2. 概要
表1 8000系の諸元
製造初年 |
1963年10月 |
定員(名) |
8100/8400/8500/8600=150、8200/8300/8700/8800/8900=170 |
自重(t) |
8100/8400=26、8200/8800=38、8300=39、8500=38.5、8600=31.5、8700=32、8900=28 |
最大寸法(mm) |
長:20000 幅:2850 高:4200 |
主電動機 |
直流直巻補極補償巻線付電動機130kw(8200/8300=TM-63、8500/8800=TM-64) |
主制御装置 |
総括制御加減速バーニア式カム軸式(8200=VMC-HT-20A、8500/8800=VMC-HT-10A) |
ブレーキ装置 |
電磁直通空気ブレーキ |
台車 |
M=FS356、T=FS056(〜8166F、〜8568F) M=FS396、T=FS096(8167F〜、8569F〜) |
補助電源装置 |
電動発電機 CLG-350D(〜81106F)、CLG-355(〜8570F)、CLG-704(81107F〜)、CLG-703(8571F〜) |
空気圧縮機 |
C-2000N(初期、中期)、HB-2000CA(後期)、D-3-FR(8500系)、HS-20C(8500系の一部) |
集電装置 |
PT4801、下枠交差型 |
冷房装置 |
RPU-3002(42000kcal/h/車) |
性能 |
最高速度:110km/h 加速度:2.23km/h/s 減速度:3.7km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常) |
8000系は7800系や7300系などの後継車両として、1963年10月に最初の編成が登場し、東上線に配属された。
8000系は東武鉄道の高性能車として有名になったが、東武鉄道初ではなかった。8000系が登場する1年前、2000系という車両が登場していた。2000系は地下鉄日比谷線乗り入れ用車両で、乗り入れ協定から18m車体で製造された。2000系では、両開き扉の採用によるスムーズな乗降車、オール電動車による高加減速の実現など様々な新機軸を採用し、8000系のベースになった。
一方で8000系では2000系で採用された新機軸をもとに、MT比率の見直しや徹底した軽量化が図られた。
オール電動車であった2000系や、同時期に製造された103系などと異なり、8000系はMT比率を1:1とすることにより、電力消費量を削減することができた。その上、製造費低減も図ることができた。
また8000系は軽量化を推し進めるにあたり、開口部補強を簡略化するため戸袋窓を廃止し、ノーシル・ノーヘッダー構造の準張殻構造(セミ・モノコック構造)とした。その結果、4両比較で従来の149tから120tにまで軽量化することができた。これにより、電気料金や制輪子(ブレーキシュー)の購入費用等のコスト削減を目指した。
ところが、軽量化を推し進めた結果、閑散時とラッシュ時で荷重差が大きくなるという問題が予想されたため、その対策として空気バネ台車を採用した。自動高さ調節弁によって空積にかかわらず、床面高さを容易に一定に保てるようになった。さらに、枕ばねが重ね板ばねで支持方式が軸箱守式の台車だった7800系列に比べ、乗り心地も良くなった。
写真2 最初に製造された8106Fと後期車の81110F
3. 最近の話題
近年8000系は新型車両の導入により廃車が進んでいる。そんな中、8111Fをはじめとしたリバイバルカラーになった編成の登場により、多くの話題を呼んでいる。
表2 8000系のリバイバルカラーとその概要
編成 |
塗装変更年月 |
塗装 |
概要 |
8111F |
2012年8月 |
ツートンカラー |
東武鉄道最後の東武顔と呼ばれた編成で、所有が東武博物館である。現在はイベント列車や団体専用列車として活躍している。 |
8198F |
2015年11月 |
フライング東上カラー |
同年東上線全線開業90周年を記念し、かつて同線で走っていた列車のカラーを復活させたリバイバルカラー。この塗装に変更した当初は東上線(小川町-寄居間、以下略)の運用が多かったが、越生線でも活躍している。 |
81107F |
2014年11月 |
ツートンカラー |
8000系が池袋口から撤退した2015年1月に81107F、81111F、8506Fの10両編成による歴代カラーリングの特別列車が運転された。現在は東上線および越生線で活躍している。 |
81111F |
2014年3月 |
セイジクリーム |
上記の81107F同様現在は東上線および越生線で活躍している。 |
8577F |
2016年3月 |
昭和30年代標準色 |
「下町の魅力再発見ラリー」に合わせて塗装変更された。現在は亀戸線および大師線で活躍している。 |
写真3 東武アーバンパークラインに導入された60000系
写真4 昭和30年代標準色の8577F
また、東武アーバンパークラインでは2016年3月26日のダイヤ改正より、急行運転が始まり、2015年1月17日で東武東上線の池袋口から8000系が引退して以来、およそ1年ぶりに8000系で急行幕が再び見られるようになった。60000系の導入が再び始まるまで、しばらくは8000系の急行幕を見る機会も多いことであろう。
4. まとめ
はじめに述べた通り、8000系は1963年に登場し、製造から50年を過ぎたものや、それに近いものも多い。修繕を受けたものがほとんどであるが、経年劣化も多くみられるようになってきている。今後も東武鉄道では新型車両の導入が進み、8000系の置き換えも引き続き行われると考えられる。まだそれなりに数があるうちに記録や乗車をしておきたいものである。
5. 参考文献
・Kasukabe総合車両センター、http://www.krfj.net/kasukabe/、2016年8月参照
・東武8000系写真館、http://www.geocities.jp/tswpw591/、2016年8月参照
・PHP研究所:「東武鉄道のひみつ」
・鉄道ピクトリアル2016年3月号:「【特集】東武鉄道8000系」
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