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東武東上本線の種別とダイヤ


交通システム工学科 2 5008 T.I


1.はじめに

 東武東上本線は池袋を起点として、朝霞、川越、東松山を経由し寄居に至る営業キロ75kmの路線である。地図上では池袋から埼玉県へ北上するような格好で、国道254号線(川越街道)とおおよそ同じ方面に延びる。このことから、東上の由来は東に上っているからではなく、東京と上州(計画上の終点は渋川)を結ぶ路線からという裏づけが取れる。和光市〜志木間は複々線、池袋〜和光市間、志木〜嵐山信号所間は複線、嵐山信号所〜寄居間は単線、全線直流1500V電化されている。支線として坂戸から越生に延びる越生線もある。和光市駅から東京メトロ有楽町線、副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線と相互直通運転を行っている。今回は、この東上線の種別とダイヤの考察をしたいきたいと思う。


2.種別

 東上線はもともと路線自体が長くないために、特急、急行、準急、普通の4種別程度しかなかったが、TJライナーが登場した2008年の改正以降、非常に増えた。沿線の宅地化などによる沿線住民の増加などで、いままでより多くの需要に応えるために設定されたと考えられるが、「今も昔も」急行がメインで利用されている。東上線の退避可能駅は中板橋、上板橋、成増、和光市から志木の複々線区間、ふじみ野、川越市、森林公園となっている。尚、和光市駅は23番線については東京メトロへ続く線路となるため、優等退避を行うことはできない(上り線側については和光市駅手前にシーサスクロッシングがあるため、その手前で止めておけば退避できないこともないが・・・)。2002年のダイヤ改正以降は、池袋から小川町間、小川町から寄居間で系統分断しており、池袋から寄居間を通しで運転する列車はない。

 では、ここで各種別の紹介をしていこう。


2-1.現行種別

2-1-1.普通

 各駅停車のことである。私鉄では各駅停車と表記されることが多いが、JR同様普通となっている。尚、駅や車内の放送では各駅停車と案内されている。現行のダイヤでは成増、川越市発着が主に設定されているが、朝夕では志木、森林公園行き、早朝、深夜には上福岡発着、小川町発着の列車も設定される。東京メトロ有楽町線・副都心線の直通も普通での案内となるが、解説は地下鉄直通の項で詳しく見ていく。幕やフルカラーLEDでの表示は白地に黒字で、3LEDではオレンジ字で表示される。



写真1 普通森林公園行の側面幕



写真2 普通成増行の3LED表示

2-1-2.ワンマン

 現在小川町〜寄居間の列車と越生線の営業列車はすべてこの種別となっている。各駅に止まるが、運転士のみで車掌はいない。運用はすべてワンマン対応の8000系で行われている。表示は3LEDでオレンジ字となっている。駅の案内表示では普通として表示される。



写真3 ワンマン越生の3LED表示


2-1-3.準急

 停車駅は池袋、成増と成増より先の各駅。現行のデータイムでは、川越市発着と森林公園発着が中心に設定されている。朝夕ラッシュ時などでは小川町発着の設定もある。東上線の準急といえば青であったが、2013年のダイヤ改正時に緑に変更となった。(遠目から見ると過去に設定されていた特急幕に見えるため、一部ファンから喜ばれた。)変更の理由は諸説あるが、西武の準急は緑、東武の準急は青であると、東急や横浜高速鉄道の車両に2色の準急幕を用意するのは大変であるからというのが有力である。幕とフルカラーLEDは緑地に白字、3LEDは緑字で表示される。



写真4 青の準急川越市行側面幕



写真5 青の準急川越市行側面フルカラーLED表示



写真6 池袋駅の列車案内表(青準急時代)



写真7 緑の準急森林公園行側面方向幕



写真8 準急小川町行の側面3LED表示


2-1-4.急行

 停車駅は池袋、成増、和光市、朝霞台、志木、ふじみ野、川越と川越より先の各駅。東上線の主力種別である。現行のデータイムでは4本中2本が東武池袋口発着、残り2本が東急・横浜高速線まで直通するFライナーに割り当てられている。Fライナーは森林公園発着、東武池袋口は森林公園発着、小川町発着が設定されている。幕とフルカラーLEDでは赤地に白字、3LEDでは赤字で表示される。



写真9 急行小川町行の側面方向幕



写真10 急行森林公園行の3LED表示



写真11 急行森林公園行のフルカラーLED表示


2-1-5.快速

 停車駅は池袋、成増、和光市、朝霞台、志木、ふじみ野、川越、川越市、若葉、坂戸、東松山と東松山より先の各駅。小川町発着のみ設定されている。2013年に新設された比較的新しい種別。前ダイヤでは全てデータイムに30分に1本小川町発着で設定されているが、現行ダイヤでは平日深夜にも上り1本が設定された。幕は水色地に黒字、3LEDは緑地で文字消灯、フルカラーLEDは水色地に白字で表示される。(幕は非常に見づらい。)



写真12 快速小川町行の側面方向幕



写真13 快速小川町行のフルカラーLED表示


2-1-6.快速急行

 停車駅は池袋、和光市、志木、川越、川越市、坂戸、東松山と東松山から先の各駅。現在、別料金なしで池袋から小川町まで乗車出来る最速達の種別。主に朝夕に森林公園発着と小川町発着が設定されている。休日のみではあるが、現行ダイヤから東急線方面発直通列車も設定されるようになった。夕方の上り快速急行のほとんどがTJライナーに順当する50090型の送り込みである。そのため、池袋到着後にTJライナーとなる列車はシートがクロスシートで運用される。種別の色は特急の色を引き継ぎ緑であったが、2013年のダイヤ改正の際に準急と色を入れ替え、青となった。幕とフルカラーLEDは青地に白字、3LEDは緑地に赤字で表示される。



 写真14 緑の快速急行森林公園行側面方向幕



写真15 緑の快速急行池袋行のフルカラーLED表示



写真16 青の快速急行森林公園行側面方向幕


2-1-7.TJライナー

 停車駅は池袋、ふじみ野、川越、川越市(上りは通過)、坂戸、東松山と東松山から先の各駅。朝は上り森林公園発、夕ラッシュに下り小川町行きと森林公園行きが設定され、着席整理券制である(下り列車はふじみ野より無料で乗車可能)。

2008年のダイヤ改正時に新設された。列車名は、3つの列車名候補から公募で決定された。原則50090型のクロスシートで運用されるが、万が一50090型で運用できない場合には50000型で運用されることになっているが、今まで全て運休で対応されているため、実際に50000型で運用されたことはない。種別案内の種別色はオレンジであるが、フルカラーLEDではTJライナーのロゴで表示される。駅では種別がフルカラーで表示可能なものは白地にロゴ、3LEDではオレンジ地に文字消灯で「ライナー」と表示されている。



写真17 TJライナーのフルカラーLED表示


2-1-8.地下鉄直通

有楽町線方面と副都心線・東急東横線・横浜高速鉄道線方面がそれぞれ設定されている。東上線内は基本的に普通となるが、一部副都心線・東急東横線・横浜高速鉄道線直通列車は東上線内急行、又は快速急行となる。尚、東上線・副都心線が急行、東急線・横浜高速鉄道線が特急で運行される列車はFライナーの愛称で案内される。表示は東上線内の種別に準じた表示となる。Fライナーについては、Fライナーのロゴが急行の文字の左に表示される。



写真18 普通渋谷行のフルカラーLED表示



写真19 Fライナー急行元町中華街行のフルカラーLED表示


 

2-2.過去の種別

2-2-1.通勤急行

 停車駅は志木までの各駅と志木、和光市、成増、池袋。朝ラッシュの上り池袋行きのみ設定されていた。もともと2008年のダイヤ改正以前は朝ラッシュに急行が設定されていなかったため、志木から和光市の複々線を活用して速達性を確保していた。2008年のダイヤ改正以降、朝ラッシュにも急行が設定され、速達性として存在が薄れてしまった。2012年のダイヤ改正以降は徐々に準急に変更され、2016年のダイヤ改正時に消滅した。種別色は紫であるが、幕やフルカラーLEDはピンク色地に白地、3LEDは赤字に文字消灯で表示されていた。



写真20 通勤急行池袋行の方向幕と、3LED列車案内の通勤急行表示


2-2-2.特急

 停車駅は池袋、川越、川越市、坂戸、東松山と東松山より先の各駅(2002年以前はつきのわ駅未開業)が基本形であったが、時期によって和光市停車、志木停車など、変化が多かった。一時期朝霞台にも停車していたという話も聞くが、資料が乏しく、事実かどうかは断定できない。2005年のダイヤでは和光市停車で、2008年のダイヤ改正時に和光市・志木停車のパターンで、快速急行に格下げされた。



写真21 特急和光市行の幕


3.ダイヤについて

 ここまで、東上線の種別についてみてきた。そこで過去のダイヤから現行ダイヤまで、データイムを中心に移り変わりを見ていく。また、それぞれのダイヤの分析を行う。そのまえに東上線の乗降客数の変化を見ておこう。図1と図2は平成18年度と平成27年度のものをそれぞれグラフ化したものである。池袋駅は平成18年度314442人、平成27年度477834人である。また、東上線全体の乗降客数は平成18年度150285人、平成27年度は1983143人と増加している。

 全体的に川越市以南は人が増加、以北は減少している駅が多い。このことからも、都心方面へ人が移動しているのがわかる。利用客増加が著しいのは、和光市、朝霞台の2駅であるが、和光市駅については副都心線の開業が大きな起因であると考えられる。朝霞台、ふじみ野、若葉、高坂、つきのわ駅周辺では宅地化が盛んに行われている。尚、ふじみ野、若葉、つきのわの宅地化は東武鉄道が主体となって行われている。北坂戸駅は利用客が激減しているが、これは駅周辺にある北坂戸公団の高齢化と入居率の低迷が原因であると考えられる。

 平成27年度の乗降客数に注目すると、和光市から志木間は非常に乗降客数が集中しており、池袋から成増間、柳瀬川から新河岸間は最大でも6万人程度、川越市から森林公園までは4万人以下、森林公園より先は1万人以下と、需要の段落ちが激しい。つきのわ駅は周辺の宅地化により平成18年度より1000人増加はしているが、他の駅では減少傾向である。



1 東上線の乗降客数(全線)



2 東上線の乗降客数(川越市から寄居まで)


3-1.2002年(平成14年)326日改正ダイヤ

 このダイヤ改正での大きな変更点として、つきのわ駅の開業と、森林公園〜武蔵嵐山間の複線化工事の完了である。この時の特急停車駅は、池袋、川越、川越市、坂戸、東松山、森林公園、武蔵嵐山、小川町である。データイムは急行4/1h2本が小川町発着、1本が武蔵嵐山発着又は小川町発着、1本が森林公園発着)、準急4/1h(全て川越市発着)、普通8/1h(成増発着と志木発着それぞれ4本ずつ)、有楽町線直通4/1h(全て川越市発着)、有楽町新線直通2/1h(全て志木発着)、小川町から寄居間普通2/1h(基本は4両であるが、6両も運用に入る)となっている。

 区間ごとのデータイムの本数(優等種別は各駅停車区間以外カウントしない)は、池袋から成増間は1時間あたり8本、和光市から志木間は14本、柳瀬川から川越市間は8本、霞ヶ関から森林公園間は4本、つきのわから武蔵嵐山間は3本、小川町2本といった形となっている。このことから、和光市から志木間が最も利便性が高まるようなダイヤとなっている。実際この時期の乗降客数と比例するように本数が設定されている。池袋口から準急は急行の緩急接続を行うふじみ野までの利用者が中心となり、急行はふじみ野より先の利用者が中心となった。相変わらず川越市以北が15分間隔の急行のみで、日中にしては他の線に比べ乗車率が高めという問題は解決に至らなかった。

 余談であるが、この時の最速の特急は第5列車池袋1610分発で、所要時間は、川越28分、川越市29分、坂戸37分、東松山46分、森林公園48分、武蔵嵐山55分、小川町61分で、現在のTJライナーの所要時間とほぼ変わらない。東武50000系の登場は2005年であるため、このときはまだ8000系が主力で運用となっていた。改めて8000系は高速性能に長けた車両であったことがよく分かるダイヤでもあるのだ。



3 2002年ダイヤ改正時の種別案内



4 2002年ダイヤ改正のデータイムダイヤグラム


3-2.2005年(平成17年)317日改正ダイヤ

このダイヤ改正での大きな変更点は、武蔵嵐山から嵐山信号所までの複線化と、武蔵嵐山折り返しの撤廃、小川町から寄居間のワンマン化(運用はすべてワンマン対応の8000系となり、10030系は運用撤退)、平日の特急運転廃止、休日特急を含めた池袋口からの寄居発着列車の全廃(完全な系統分断)、平日朝の8両運転廃止(朝は10両運転のみ)など、多くの変化があった。しかし、データイムのダイヤでは武蔵嵐山発着の急行が小川町発着に変更となり、小川町の1時間当たりの運転本数が1本増加したのみであった。

この時の特急停車駅は池袋、和光市、川越、川越市、坂戸、東松山、東松山から先の各駅であった。最速列車は第5列車池袋168分発で、所要時間は、和光市11分、川越25分、川越市26分、坂戸34分、東松山43分、森林公園45分、つきのわ50分、武蔵嵐山53分、小川町60分であった。現行のTJライナーより所要時間が2分程早く、停車駅数も同じで、停車駅が和光市とふじみ野で異なるだけで、現行のダイヤなど含めても、この列車が東上線の最速達記録である。



5 2005年ダイヤ改正時の種別案内


3-3.2008年(平成20年)614日改正ダイヤ

 このダイヤ改正での大きな変更点は、特急停車駅に志木を加え、快速急行に格下げ、TJライナー新設、日中急行5本化、東京メトロ副都心線全線開業により、新線池袋から渋谷まで直通区間の延長であった。

 データイムの急行が5/1hになったため、データイムのダイヤはがらりと変わった。まず、急行5/1h3本が小川町発着、2本が森林公園発着)、準急3/1h(全て川越市発着)、普通8/1h(成増発着と志木発着それぞれ4本ずつ)、有楽町線直通2/1h(全て川越市発着)、副都心線直通4/1h(川越市発着2本(副都心線内急行運転)、志木発着2本(8両編成で運転))、小川町から寄居間ワンマン2/1hとなっている。また、ふじみ野の緩急接続が行われなくなったため、準急や地下鉄直通は川越市駅まで先着する。そのため、和光市から川越市間の急行停車駅以外は本数が1本減便されたものの、いままで空いていた準急に人が流れ、急行の混雑が緩和された。また、準急はふじみ野の退避廃止により、所要時間が短縮されたため、池袋からの所要時間は改正以前の急行からの乗り換えと変わらなかった。急行が5本となりデータイムの霞ヶ関から森林公園までの増発は、有楽町線直通開始時に急行が3本から4本に増発されて以来で、川越市以北の日中の混雑率はようやく改善された。しかし、夕ラッシュではTJライナー新設を理由に、急行が5本から3本となり、急行が異常なまでに混雑することになった。

 この改正では、副都心線直通により、渋谷まで和光市から川越市では乗り換え無しでいけるようになり、三大副都心へのアクセス性が向上した。川越市発着の列車は副都心線内急行運転を行うため、東上線準急と所要時間が12分程度の差となったが、和光市から東京メトロ線になるため、運賃面では差が開く。しかし、どちらも池袋まで1本でいけるため、運賃が割高になることを知らずに副都心線直通で池袋を利用する誤乗車が開業当初頻発した。また、急行、準急ともに運転間隔が不揃いとなったため、日中の列車の時間が覚えにくく、時刻表無しでは若干利用しにくくなってしまった点は否めない。

 余談であるが、2008年ダイヤ改正当初、朝夕ラッシュの有楽町線直通列車の一部は、有楽町線内準急であった。もっとも、2010年の東京メトロダイヤ改正で有楽町線準急自体が消滅してしまったわけだが。



6 2008年ダイヤ改正時の種別案内

3-4.2011年(平成23年)35日改正ダイヤ

 このダイヤ改正の大きな変更点は、日中の優等列車である急行を12分間隔、準急を20分間隔に変更、データイムの副都心線志木発着列車の1/1hを川越市発着の有楽町線直通に変更、朝ラッシュの急行新設(2/1h)、夕ラッシュの急行を3本から5本に増発などである。

 一般の方から見れば、急行12分間隔、準急20分間隔のダイヤは非常に使いづらいと思われるだろうが、実はよく考えられた東上線ダイヤ史に残る名ダイヤである。急行は池袋0012243648分発毎となり、準急は103050分発となった。池袋10分発の準急は成増、30分発はふじみ野で急行との緩急接続をとり、50分発は川越市まで退避無しとなった。急行は、成増、和光市、ふじみ野のいずれかで緩急接続を行い、急行通過駅の利便性も考慮されている。若干無理やりではあるが、地下鉄直通の1本が志木発着から川越市発着に変更となったため、柳瀬川から川越市間の本数は、2008年改正ダイヤ以前に戻った。緩急接続の場所が同じ種別でも変わるのは若干分かりにくくはあるが、柳瀬川から川越市間の準急と普通、地下鉄直通を合わせて8本で、急行の前後を走る列車は少なくはないため、利便性は悪くはない。

 しかし、時間の分かりやすさの代償として、越生線の運転間隔が15分間隔であるため、接続が悪くなってしまった。また、小川町から寄居間のワンマン列車は、急行の接続を取るため、20-40分間隔となり、時間にばらつきが生まれてしまった。(といっても2/1hは確保されているため、おおよそ1時間に1本の分かりにくいJR八高線に客が流れることはなかった。)



7 2011年ダイヤ改正時の種別案内


3-5.2013年(平成25年)316日ダイヤ改正

このダイヤ改正の大きな変更点は、快速の新設、東京メトロ副都心線を介しての東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい21線との相互直通開始、下りTJライナーの増発、データイムの志木発着廃止などである。

快速が2/1h(全て小川町発着)、急行が4/1h3本が森林公園発着、1本が小川町発着)、準急が2/1h(全て川越市発着)、普通が8/1h6本が成増発着、2本が川越市発着)、有楽町線直通2/1h(全て川越市発着)、副都心線・東横線・みなとみらい線直通2/1h(全て川越市発着、副都心線内急行、東横線・みなとみらい線内特急)、小川町から寄居間はワンマン2/1hとなった。新設された快速の停車駅は池袋、成増、和光市、朝霞台、志木、ふじみ野、川越、川越市、若葉、坂戸、東松山、東松山から先の各駅である。川越市以北の通過駅がある列車がデータイムパターンで設定されたのは初めてのことである。

さて、このダイヤの利便性だが、正直非常に使いづらかった。まず、運転本数についてだが、志木折り返し撤廃により、和光市から川越市間8/1hとなった。前ダイヤでは和光市から志木間の運転本数は12/1hであったことを考えると、突然4本も減便されてはたまらない。さすがに、朝霞市(朝霞・朝霞台)、新座市(志木)には東武鉄道が事前に謝罪の意が含まれた文書が送られていたようである。これにより、日中の準急が非常に混雑することになってしまった。また、快速の緩急接続がふじみ野で地下鉄副都心線直通の川越市発着列車となっていたため、川越市以北の快速通過駅利用者は必然的に急行の利用をせざるを得なくなり、利便性は2008年以前と同じレベルになってしまった。尚、平成27年度の川越市以北の乗降客数は、第1位が鶴ヶ島、第2位が霞ヶ関であり、快速通過駅である。そのため、実質の快速利用者は若葉、坂戸、東松山とさらにその先の利用者、坂戸で乗り換えの越生線利用者に限られた。 そのため急行に人が集中し、快速はがらがらという何のために新設したのか全くわからない事態が発生した。しかし、平日の池袋17時発の快速(第4129列車)のみ川越市で準急森林公園行きと緩急接続を行うため、この列車の評判は非常によかった。(快速は川越市の緩急接続が必要であると東武鉄道が気づくのに3年かかった)

余談であるが、このダイヤ改正でデータイムの志木発着が廃止されたため、志木にある4本の引込み線は活用されなくなり、複々線区間もほとんど活用されずに和光市で緩急接続を取るダイヤとなってしまった。正直、東上線史でも12を争うレベルで使えないダイヤであると筆者は考える。おそらく、2012年度にこっそり東上営業部が廃止され、東武鉄道に完全に吸収されてしまい、ダイヤ担当が変わってしまったのだと考えられる。(さすが本線で毎回ダイヤ改悪といわれるものしか引けないスジ屋である)逆に本線のダイヤは、歴代の東上線のダイヤを応用したと思われるものが見られるようになった。



8 2013年ダイヤ改正時の種別案内



9 2013年ダイヤ改正時のデータイムダイヤグラム


3-6.2015年(平成27年)124日修正ダイヤ

 このダイヤ改正は、池袋から小川町間の800010両の運用終了に伴い、池袋から和光市間から順次T-DATCに移行するための運転時分調整が目的である。そのため、運転時分に変化はあったものの、列車本数などに変化はなかった。一応、始発列車が2分早くなった。全体的に各列車の所要時間が延び、和光市から川越市は従来から+1分、川越市から森林公園は+2分、森林公園から小川町は+3分となった。

 

3-7.2016年(平成28年)326日ダイヤ改正

 このダイヤの大きな変更点は、日中の副都心線・東急東横線・みなとみらい線直通列車の東上線内急行運転の開始、データイムの準急を4/1hに増発、データイムの快速と準急が川越市で緩急接続実施、朝の上りTJライナーの新設、通勤急行廃止、平日下りTJライナーを18時から0時まで30分間隔に変更、増発などである。

東上線で初めて地下鉄直通列車の優等化が行われ、データイム2/1hFライナーとして急行が直通する形となった。そのため、東武池袋口の急行は半減し2/1hとなった。その変わり、準急森林公園発着の列車が和光市駅でFライナーの接続を行い、現状と同じ本数を維持し、利便性を損なわないような配慮が行われた。また、この準急森林公園発着の列車は後続の快速と川越市で緩急接続を行う。そのため、霞ヶ関から森林公園は快速を除いても6/1hとなった。各種別の本数を見ると、快速が2/1h(全て小川町発着)、急行4/1h2本がFライナー森林公園発着、1本が森林公園発着、1本が小川町発着)、準急4/1h2本が森林公園発着、2本が川越市発着)、普通が8/1h6本が成増発着、2本が川越市発着)、有楽町線直通2/1h(全て川越市発着)、小川町から寄居はワンマン2/1hとなった。

ダイヤのベースは前回とほとんど変わってはいないが、和光市で副都心線直通列車と急行が接続を取っていたため、そのまま列車を入れ替え、普通ではなく準急に変更。また、快速の利便性を確保するため、準急森林公園発着を増発する形の対応となった。しかし、基本の急行が15分に1本を守っているため、川越市以北では1時間の間で来る列車の本数に大きな偏りが出来てしまった。坂戸の例をあげると、急行、準急、快速、急行と15分まとまってくる時間と、急行、急行で15分間列車が来ない時間が出来ている。(まるでギャンブルのようなダイヤとなってしまった)せっかく、快速の停車駅が池袋から川越市まで急行と統一されているのだから、急行+快速で10分間隔運転を行えば、だいぶ落ち着いた形になったのだろう。しかし、運用の都合や途中駅からの小川町方面利用者に配慮したため実現しなかったと思われる。また、駅での表示はFライナーではなく、急行元町・中華街と表示される。一応、接近放送時は地下鉄直通であることは放送されるのだが。もちろんFライナーでも池袋に行くことが可能であるが、当然地下鉄直通となるため、運賃は割高となる。 2008年の副都心線開業時と同じ出来事が起こったが、運賃差額が出ることを知らずに誤乗車してしまうケースが発生した。最近は交通系ICが普及してきたため、それにすら気づかずに利用している可能性もある。

このダイヤ改正では、TJライナーが0時まで30分おきの運転となったため、必然的に川越市以北の終電が遅くなった。改正前の森林公園行最終列車は池袋2348分発の準急列車であったが、改正後は0時のTJライナーに続いて出発する02分発の準急列車が最終となった。もともと森林公園に車庫があるため、長らく最終列車の引き伸ばしは行わなかったが、ようやく改善された。



10 2016年ダイヤ改正時の種別案内



11 2016年ダイヤ改正時のデータイムダイヤグラム


4.おわりに

 ここまで、東上線の種別と約15年間のダイヤの移り変わりを見てきた。種別もシンプルで分かりやすかった東上線も、たった15年でも大きな変貌を遂げた。その中でも東武、西武、東京メトロ、東急、横浜高速鉄道の5社直通と、東上線内急行で走るFライナーは昔の東上線の常識では考えられないような変化であった。東上線沿線ではバブル崩壊後川越市以北の地域では人口減がみられたが、現在ではだいぶ落ち着いてきており、若葉や高坂など宅地化開発が行われ、増加している地域も見受けられる。今後は、少子高齢化がさらに進み、定期収入の減少と戦うことになるが、東上線は幸いなことに、川越や小川町の和紙、越生の梅林など、観光資源があるため、観光業に少しずつ力が加わっていくのではないだろうか。その先駆けではないが、20165月ごろ小川町で開催されたハイキングイベントにあわせ、東急線から東上線内快速急行の列車が臨時として森林公園から小川町まで延長運転を行った。尚、この快速急行は東急車と東京メトロ車の運用となっている。東急車が小川町まで顔出すのは年末年始の初日の出号以外では、開業前の貸し出し運転程度しか機会がなかった。さらに、東京メトロの車両に限っては、試運転以外の入線実績がほとんどなかった。小川町の自然に囲まれた単線を走る東京メトロ車と東急車というのはまた不思議な雰囲気であった。

 2016年度の東上線ファミリーファンフェスタは伊勢志摩サミットの関係で中止となってしまったが、沿線のららぽーと富士見の東急ハンズにて東武営業部が主体となり関連グッズの販売などが行われた。確かにイベントは中止になったが、東上線自体運用している形式が多いため、走る博物館化している。また8000系のリバイバルや50090系のフライング東上ラッピングなどネタも多くあるため退屈はしない。今後も東武東上線がよりよくなっていけばいいと願うばかりである。最後に、この記事を読んで東上線の魅力が伝わり、少しでも興味を持っていただければ幸いである。


参考文献

1.東武鉄道ポータルサイト,企業情報,駅情報(乗降人員),平成28815日参照

http://www.tobu.co.jp/corporation/rail/station_info/

2.関東交通広告協議会,レポート,平成18年度1日平均乗降人員・通過人員,平成28815日参照 http://www.train-media.net/report/0711/tobu.pdf

3.週刊歴史でめぐる鉄道全路線大手私鉄No.05 東武鉄道2,朝日出版,pp4-14

4.東武東上線時刻表 平成25316日ダイヤ改正号,東武鉄道

5.東武東上線時刻表 平成27124日現在,東武鉄道

6.東武東上線時刻表 2016.3.26ダイヤ改正号,東武鉄道

7.東上本線・越生線列車運行計画図表 平成十四年三月二十六日改正,東武鉄道東上業務部

8.東上本線・越生線列車運行計画図表 平成17317日改正,東武鉄道東上業務部

9.東上本線・越生線列車運行計画図表 平成2335日改正,東武鉄道

10.東京時刻表20127月号,交通新聞社,pp731-758


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