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京葉線205系の青モケットを訪ねて


交通システム工学科 2 5023 K. O


1. はじめに

蘇我駅と東京駅の間40km余りを結ぶJR京葉線。今から5年前、とある形式がこの海沿いの路線を去った。銀色の車体に赤い帯を巻いたその車両は205系といい、幸運にも解体を免れた車両は改造を受け、海を離れ、あるものは富士山の麓へ、あるものは日光・宇都宮を抱える栃木県へと活躍の場を移した。

筆者はそんな京葉線用205系のとある車両部品を2010年の尾久車両センター公開で開催された鉄道部品販売(廃品)で購入した。それは京葉線205系の座面である。京葉線用の205系は固有の青色をした座席生地(モケット)が特徴的であり、その京葉線オリジナルの価値に惹かれた私は3人掛けの座面を¥3,000で購入したのである。この京葉線青モケット、2011年の撤退から他線区への転用改造で消滅すると思われていたが、予想に反して栃木県向けの車両は青モケットのまま出場し使用が開始されたのである。しかしながら、その後の赤モケットの設定と検査入場に伴いモケットの交換が2015年より進行し、ついに20162月、最後の1編成が入場し営業線上から京葉線仕様の青モケットが消滅してしまった。そこでこの記事では引退から5年を迎え、京葉線時代の面影が失われつつある元京葉線205系の概要、現況について取り上げていく。



写真1 海を思わせる青い座席が特徴であった京葉線205



写真2 筆者の購入した京葉線205系の座席


2. 概要(沿革と分類)

 京葉線用の205系は大きく分けて2つのグループに分類することができる。(ここで「京葉線の」と記さないのは2016年現在でも武蔵野線用の205系が京葉線で活躍しているためである。)

1つ目のグループは1990年の新木場〜東京間の開業、京葉線全線開通に合わせて製造され、最高速度110km/hに対応している生え抜きで独自の前面形状を持つグループである。

このグループは白いFRP成形の丸みを帯びた前面が特徴的であり、車番の横に110km/h対応を示す丸印が記されていた。平成元年から平成2年にかけて10両編成12本が導入され、内房線・外房線直通の絡む運用を中心に活躍していた。末期にはケヨ8編成が8両化され[81]の編成札を掲げ試運転に充当されるなどした。

現在では4両編成10本が直江津・下新田などへの疎開を経て、宇都宮線・日光線向けの工事を施され、205600番台として小山車両センターへと活躍の場を移している他、長野総合車両センターのスキルアップセンター内にケヨ11編成の先頭車を務めていたクハ204-118が保管されている。



写真3 110km/h対応の生え抜き編成


 2つ目のグループは2002年以降にE231系の導入と103系の置き換えに際してJR総武線・山手線から転入してきた205系原型の前面をしたグループである。

2002年に中央・総武線より転属してきたケヨ21編成、山手線より転属してきたケヨ2223編成、2005年に山手線より転属してきた量産先行車のケヨ24-27編成と合計10両編成7本が導入され最高速度100km/hの京葉線内のみの運用を中心に活躍していた。

しかしながら2007年に発生した川越線踏切事故の補填用にケヨ21編成よりモハ204/5-277ユニットを供出したことで、2008年に残りの8両が武蔵野線用に改造されケヨM36編成となった。またケヨ23編成についても武蔵野線増発のため2007年よりサハ205-29/30を旧習志野電車区へ疎開したうえで武蔵野線用のケヨM66編成として運用したのち、2009年に前述のM36編成復帰と横浜線増発に伴い、モハ204/5-44とサハ205-29/30を交換し8両が鎌倉車両センターへ転属しクラH28編成となり、モハ204/5-44は余剰廃車となった。ケヨ21編成・ケヨ23編成を捻出するために当時置き換えの進んでいた中央快速線より201102編成(トタT32→ケヨ70/トタT130→ケヨ74)が京葉線へと転入している。

京葉線用として残留した5編成については2010年より始まったE2335000番台の導入により順次離脱となり長野・大宮へと配給輸送が行われた。京葉線用205系の最終運用は2011720日のケヨ24編成となった。

ケヨ24編成はクハ205、モハ204/5の各トップナンバー以外を長野総合車両センターへ配給輸送し解体、クハ205、モハ204/5の各トップナンバーを大宮へと配給輸送し大宮車両センター内の検修技能訓練所の教材として所在している。

ケヨ2225-27編成に関しては長野総合車両センターへ配給後、編成中7両を解体し、残りのクハ204とモハユニットについては富士急行線用として長野総合車両センター内で東日本トランスポーテックによる改造が施され、富士急行6000/6500系として譲渡された。モハ204/5-10についても富士急行へ譲渡されたがこちらは未改造で部品取りとして赤帯を保ったまま河口湖駅構内に留置されている。



写真4 他線区から転入してきた205系原型顔編成


3. 現況

 現存する京葉線在籍経験のある205系に関しては次のようになっている。

3.1. 海外譲渡

ケヨ21→ハエ24編成(モハ204/5-277)、ケヨ23→ケヨM66→クラH28編成

京葉線から埼京線川越線、横浜線を経た10両が海を渡りインドネシアの地で活躍している。JR東日本からKRLジャボタベックへ譲渡された車両は500両近くになるが、赤帯を纏った車両はこの10両のみである。(ただし疎開で京葉車両センターを訪れた車両や団体臨時で京葉線を走行した車両は数編成いる。)



写真5 インドネシア譲渡前の疎開回送で京葉線に入線した横浜線用205


3.2. 武蔵野線転属

ケヨ21→ケヨM36編成

事故の補填に充てられたモハ204/5-277を除いた8両が長野総合車両センターへ配給され、モーター車のVVVFインバータ制御への改造を施され5000番台化されたうえで武蔵野線用となった。大窓・普通顔という特徴は京葉線では唯一であったが、転用後の武蔵野線においても同編成の先頭車は南武線出身であり、屋根上の無線アンテナが屋根中央部にある5000番台編成、LEDの大窓・原型顔といった特徴の光る編成となっている。



写真6 2015年秋ごろには検査出場しきれいな姿となったM36編成


3.3. 富士急行線譲渡

ケヨ2225-27編成のクハ204、モハ204/2051両、モハ204/205-10(部品取り)

廃車となったクハ205の前面を活用した先頭化改造がモハ204に施されたほか、半自動ドア化、パンタグラフ・コンプレッサ増設、耐雪抑速ブレーキ・スノープラウの新設、客室設備の変更、行先表示器のLED化が行われ、デザイナー水戸岡鋭治氏の手により、つり革・床材・シートモケットの変更、貫通扉部への暖簾の設置などが行われた。

 形式は量産先行車ベースのケヨ25-27編成が6000系、量産車ベースのケヨ22編成が6500系となっている。





写真7・写真8 水戸岡鋭治氏のデザインが光る富士急行60006500

3.4. 205600番台化改造

ケヨ1-10編成のクハ204/5、モハ204/51

現在小山車両センターに412本が在籍する205600番台のうち、Y1-Y10編成が元京葉車両センター所属の205系である。Y22610編成が日光線仕様、その他の編成が宇都宮線仕様となっており帯色や車番の配置、車内広告、シンボルマークの有無などが異なる。転属にあたり、トイレ/水タンクの設置、半自動ドア化、暖房強化・耐寒耐雪仕様への改造・電気連結器の設置、列車番号表示器の変更、パンタグラフの変更等が施された。4両単独での運用から448両での運用もこなしている。筆者が日光線に乗車した際には空転で立ち往生してしまうなどあまり向いてない路線なのかもしれないが末永い活躍に期待したい。



写真9 日光線内で行き違う宇都宮線仕様(ケヨ7→Y8)と日光線仕様(ケヨ5→Y6



写真10 前面の異なる205系同士の併結も宇都宮地区の魅力である。


3.5. 検修用教材

クハ204-118(長野)、クハ205-1 モハ204/5-1(大宮)

 長野総合車両センターのスキルアップセンターに設置されたクハ204-118に関しては床下のグレー塗装、JRマークの変更が施されているが赤帯はそのままである。毎年10月に開催される長野総合車両センターまつりにおいてその姿を見ることができる他、車内の機器にも触れて操作することができる。

 大宮総合車両センターに設置されたクハ205-1 モハ204/5-1に関しては列番表示器の幕式化、側扉の変更などが施されている。毎年5月の大宮総合車両センター公開や高崎線車内より姿を捉えることはできるが一般人向けに車内への立ち入りが許される機会はまずない。



写真11 長野スキルアップセンター内のクハ204-118


1 京葉線205系の編成表と転用



4. まとめ

10両編成19本という他線区と比べて小所帯ながら現役当時そして引退転用後の現在でも数多くのアイデンティティーやバリエーションで趣味人の心をつかんできた京葉線の205系。稼働車は全体の30%程度になってしまい半数以上は解体されてしまったものの、現在でもその姿を見ることのできる武蔵野線・栃木・山梨・ジャカルタへと足を運びその活躍を記録してみてはいかがだろうか?


5. 参考文献

鉄道ピクトリアル No.921 JR205系電車 鉄道図書刊行会 20169月発行


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