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減りゆく直流機EF65


交通システム工学科 2 5038 T. K


1. 概要

EF65形とは、中央線電化・増発、山陽本線貨物列車電化、東海道本線の増発用として1965年から製造が開始された直流型機関車である。当初は吹田第二機関区、稲沢第二機関区、新鶴見機関区へと配置された。しかし、試作車を製造せず量産車としたため、初期はバーニヤ制御器関連の故障が相次いだ。当初は基本番台(0番台)のみの製造であったが、500番台、1000番台と使用用途に応じて番台区分が増えることとなる。

貨物牽引用として開発されたEF60を基に、歯車比を下げて中高速域での走行性能安定化を図った。10‰勾配で1300tの牽引を可能としている。


2. 番台区分

番台区分によって外観が異なる。ここでは大まかな見た目の違いについて説明する。


2.1. 0番台

 貨物機用として1135号機が製造された。製造年によって次車区分が異なる。

1次車(147) : スカートに通風孔が設置されている。


2次車(4872) : この区分から通風孔がテールライト上部に移設されている。


3次車(7384) : テールライト周りの折りたたみ式標識円盤が廃止されスッキリした印象となる。また、誘導員手摺りが20[cm]上部へ延長されている。


4次車(85104) : 避雷器がLA15A型からLA15B型となった。


5次車(105120) : 4次車と殆ど変化が無い。



写真1 5次車の118号機


6次車(121135) : 熱線入りガラスが導入された。また、スカート下端が直線型となりスカート助手席側にも乗務員ステップ追加、解放テコ上のステップも誘導員手摺りより内側のみとなっている。


2.2. 500番台

 EF58EF60 500番台が担ってきた寝台特急仕業を置き換えるために501542が製造された(うち5355420番台の7784から改造)0番台と異なり、客車に合わせた塗装、また客車関連の設備を備えている。500番台の中でもP(Passenger)型、F(Freight)型と別れている。

P(501512527531535542)

スカートに増圧ブレーキ用の元空気ダメ管、20系客車用のKE59ジャンパ連結器、増圧ブレーキ指令用のKE72ジャンパ連結器が装備されている。

0番台改造のグループは、関西発着の寝台特急増発に伴って機関車不足となることから新製間もない7784から改造された。飾り帯間隔が狭く、形式と番号の隙間が無い。

当時東京機関区に所属していたEF65は東京〜九州間の寝台特急を毎日牽引していた。夕方には品川客車区から客車を牽き出し、東京駅から発車していく。翌朝には下関へ到着後、束の間の休息を取って夕方下関から東京へと走る。毎日1000kmを高速で往復しており、検査周期が時間ではなく走行距離で回ってくるという酷使ぶりであった。

F(513526532534)

 重連総括運転用にKE70-6ジャンパ連結器、重連用ブレーキ釣り合い管コックや最高速度100km/hの高速貨車(10000系貨車)に対応した空気管付密着自動連結器、連結器の復心装置などスカート周りが複雑になっている。また、車両によってツララ切りが装備されている車両もある。

 10000系貨車を牽引する時はF型同士の重連で運用された。これは、単機で牽引に当たると高速走行を維持しにくいためである。しかし、1列車に機関車を2機用いるというのは電力消費が増えるため、すぐに後継のEF66が登場してからは高速貨物から退いた。


2.3. 1000番台

 P型とF型を合わせた機能性であるが、高速貨車を牽引しないためスカート周りはスッキリしている。また、前面に貫通扉が設けられるなど様相が大きく異なっている。貫通扉内側は屋根へと登るための梯子となっており、車体側面の昇降用ステップは廃止された。

1次車(10011017) : 登場時はツララ切が無かった。

2次車(10181022) : カニ22用のパンタグラフ下降用の装置が廃止された。

3次車(10231039) : 解放テコ上のステップが短縮された。

4次車(10401049) : テールライトカバーが外ハメ式に変更、KE59ジャンパ連結器が廃止された。スカートは3次車までと同じタイプのため穴が開いている。



写真2 4次車の1041号機


5次車(10501055) : スカートが変更されたことにより穴が塞がれた。

6次車(10561091) : このグループからPS22(下枠交差)パンタグラフになっている。また、ナンバープレートがブロックタイプになっている。

7次車(10921118) : 7,8次車の外観は6次車とほぼ変わらない。

8次車(11191139) : EF58の置き換え用、関西〜九州間寝台特急牽引用に造られた最終グループ。



写真3 8次車の2121号機


3. 塗装バリエーション

EF65は個体数の多さゆえにカラーバリエーションも豊富である。ナンバープレートとの組み合わせまで含めると長くなるためここでは車体色のみ述べる。


(1)国鉄色



写真4 103号機



写真5 1124号機

500番台、1000番台は寝台特急用に車体色が統一され、帯が入っている。


(2)更新色



写真6 2089号機(大宮更新)



写真7 2127号機(広島更新)



写真8 0番台広島更新色の114号機


EF65 21を初めとし、EF66 100番台などへ普及していった塗装。大宮更新色、広島更新色とあり、広島更新色はモニター屋根もスカイブルーで塗装されている。また、1000番台においては黄土色(通称:カラシ)の貫通扉を装備している。

なお、広島更新色は104114100810101012103110321033108910931127号機で実施された。1089号機が広島更新色を纏っていたのはごく短期間であり、また大宮更新色に戻されている。


(3)試験塗装



写真9 1059号機


11610591065号機で実施された。


(4)レインボー塗装



写真10 側面に大きく描かれたEF65の文字が特徴


スーパーエクスプレスレインボー客車に合わせた塗装。JR東日本所有の10191118号機で実施された。


(5)茶色塗装

95657号機で実施された。75号機も広島車両所公開イベントで茶色塗装になったが、これは廃車後のことである。9号機には「JR貨物」のロゴ、56号機にはJRのロゴが入れられたが、57号機には何も入っていない。



写真11 57号機

最後まで残った2次車であった。


(6)ゆうゆうサロン岡山塗装

JR西日本所有の123号機が客車に合わせた塗装であった。


(6)ユーロライナー塗装

JR東海所有の105106112号機がユーロライナー客車に合わせた塗装であった。


(7)トワイライト塗装

JR西日本所有の1124号機がトワイライトEXP.塗装にされた。


4. 現存するEF65

20168月現在、EF65が所属する機関区は「下関車両管理室(JR西)」「新鶴見機関区(JR貨物)」「田端運転所(JR)」「高崎車両センター(JR)」の4箇所である。11機違いはあるが、ここでは大まかに説明する。

 下関に置かれたEF6510機。そのうち、5機がATS-Pを積んでおり上郡以東での運用を可能としている。貫通扉上部の塗り分けを省略したタイプも所属している。

 新鶴見にはJR貨物が所有する全てのEF65が配置されている。また、ブレーキ管減圧促進改造を受けた車両は赤プレートとなっている他、100km/hを超えて運転する車両ではない(運転記録装置を積んでいない)ため、原番に+1000した2000番台となっている。

 +1000番台化された機関車のナンバープレートはエッチングに切り抜き文字を張り付けてある状態で、文字も金色が殆どである。

 田端運転所に所属しているEF65は避雷器後ろにクーラーを取り付けてある。なお、貨物所属のEF65は助手席側にクーラーが積んである。定期旅客仕業が無くなった今、牽引するのは工事臨時列車ばかりとなった。

 高崎車両センターに所属するEF65501号機のみ。イベント列車で活躍する他、工事臨時列車を牽引している。2008年の全般検査の際に側面のJRマークが撤去され、より原型に近い塗装となった。

 

 

5. 晩年の岡山機関区所属時代を振り返る

 20113月のダイヤ改正でEF65は岡山機関区から姿を消した。晩年は首都圏との機関車交換や転属で賑わいを見せた。

 20084月から首都圏でATS-PFを搭載していない機関車は運用が出来なくなった。そこで、高崎に所属していた0番台と一部1000番台は先が長くないことから、岡山機関区の1000番台(1093,1127号機)とトレードされた。

 20072008年に高崎から岡山へ転属してきた機関車は以下の通り。

0番台: 57()108,115,118,119(大宮更新)

1000番台: 1009(大宮更新)1038(国鉄)



写真12 転属してきた115号機


1009号機は1次車ながらもPS22B形パンタグラフを搭載していた。また、1038号機は切り抜きナンバーの国鉄色とあり原型度が高かった。

 この頃、岡山に貸し出しという形で試験塗装の1059号機が所属していたが、すぐに新鶴見へと返却された。

 そして、2009年にはJR貨物高崎機関区からEF65が完全撤退となった。高崎機関区に所属していたEF65は新鶴見、岡山へと移籍する。また、新鶴見からも岡山への転属が発生。ここで岡山機関区へと移籍した機関車は以下の通りである。

1036,1037,1040,1043(大宮更新)

1041,1077,1078,1079,1119,1121,1122(国鉄色)



写真13 3次車の1036号機


移籍してきた更新色は全てPS17形パンタグラフ搭載、国鉄色は切り抜き文字、原型プレート、赤プレート、青プレート装備車と種類が豊富であった。



写真14 1077号機

赤プレート装備車である。



写真15 1079号機


1077号機とはスノープロウや元空気ダメ管の有無で判別が容易である。



写真16 1119号機

原型ナンバープレート装備車。




写真17 1121号機


高崎の前の所属は下関であった。前面と側面のナンバープレートが交換されている。なお、1122号機は前面も側面も全て青ナンバーであった。

 そして2011年、岡山機関区からEF65は姿を消す。0番台は全て廃車となり、1000番台の一部は新鶴見機関区へと転属した。


6. 終わりに

 現在も少数ながらEF65は活躍を続けている。しかし、貨物列車の長大化、高速化によって牽引できる列車も限られており、オールラウンドに活躍できるEF210等の大量増備によって確実に数を減らしている。普段通勤通学等でEF65を目にする機会があればその雄姿を目に焼き付けてあげてほしい。


参考文献

『直流電気機関車EF65(イカロス出版)2008820日発行


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