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学割学の基礎


交通システム工学科 3 4092 T. H


1. はじめに

 企画券、回数券、乗車券分割、株主優待鉄道を利用する際に運賃を安くあげる方法はいくつかある。その中でも適用範囲や自由度・効用が比較的大きいのが学割である。私は昨年度その学割を使用し、全国各地様々な地を旅した。結果、学割証の使用枚数は実に30枚にのぼった。この記事では、そんな学割の基礎的な情報や活用の仕方について紹介する。


2. 学割の基礎知識

 学割は正式名称を「学生割引普通乗車券」といい、もともとは乗車券が高額となる中・長距離の帰省対応として設定されたものである。普通乗車券であるため基本的な扱いは券売機などで購入できる一般的な乗車券と同じである。

 内容としては、各鉄道会社から指定を受けた各種学校の学生・生徒がその鉄道会社を利用する際、利用区間の片道営業キロが101km以上となる場合に運賃が2割引になるという制度である。ただし乗車券販売の際、営業キロは小数点以下を切り上げて計算するため、正確には同社線100.1km以上の片道を利用する場合に適用となる。なお特急や新幹線乗車の際にも併用することができるが、割引は運賃のみに適用されるため特急券や指定席券などは安くならない(図1)。



1 JRの学割乗車券の例

この時は新幹線を郡山大宮で利用した


 また101kmを超える路線長を持つ会社でも、制度を定めていないために学割が適用されない場合もあるので注意が必要である。一方路線長100km以下の会社でも、直通先の会社が101km以上ある場合には、直通先の運賃のみを割引いた切符を発売している場合もある(図2)。



2 会津鉄道会津田島駅発券の学割乗車券

会津鉄道は営業キロ100km以下の会社であるが、直通先の東武鉄道の分が割引されている。


3. 学割乗車券の購入方法

 学割を利用する際にはまず、各学校で発行している学割証を入手しておく必要がある。当学部には証明書自動発行システム「パピルスメイト V」が学生課近辺に設置されており、それにより簡単に学割証を発行することができる。なお当学部の場合1日に発行できるのは4枚、合計発行上限は10枚である。ただし上限は学生課に申請すれば変更が可能である。学割証の有効期限が発行から3ヶ月である点に注意する。

 次に学割乗車券の発券である。JRの場合対応しているのはマルスのみで、いずれの自動券売機も利用できないためみどりの窓口で発券する。私鉄の場合も券売機では買えず特急券窓口もしくは改札窓口で購入することになる(図3が、係員が発券に慣れていない場合が大半なので時間がかかることを念頭に入れておいたほうが良い。窓口に学割証を提出する前に、片道・往復・連続のいずれであるか、そして発着駅を欄に記入しておく。窓口ではまず学割利用である旨を伝え、学割証を提出し併せて学生証を提示する。続いて出発日と発着駅、希望があれば経由地を伝える。



3 東武鉄道新鎌ヶ谷駅発券の学割乗車券

このときは改札窓口で発券した


 上記のようにすれば金額が提示され、お金と引き換えに学割乗車券を手にすることができるはずである。まれに経由地等について窓口から説明を受ける場合があるから、その場合はきちんと聞いて理解する。なお、学割証は窓口のほうで預かるため返却されない。


4. 学割乗車券の利用方法

4.1. 学割乗車券で乗車する方法

 学割乗車券を購入した後はいよいよ乗車となる。乗車の際には必ず学生証を携帯する。また、乗車前には改札を通らなくてはならないが、裏が黒い磁気入りの切符については一般的な乗車券と同じなので自動改札を利用できる。このとき、特急券等も同時に投入してよい。磁気の入っていない切符の場合は改札窓口を利用することになる。

 普通乗車券であるので、乗車が終わると回収される。持ち帰る場合は無効印等を押してもらう。


4.2. 片道・往復・連続

 学割証を見ると乗車券の種類を選択する箇所に片道・往復・連続とある。片道と往復はそのままだが、連続というものは聞き慣れない。連続とは、乗車区間の一部が往復となる場合のことである。

 たとえば東北本線に乗車して上野から福島まで移動する際、郡山から磐越西線にのりかえ会津若松に立ち寄るとする。この場合、郡山〜会津若松の往復が重複してしまうため通常の片道切符では発券できない。別途郡山〜会津若松の往復券を用意しても問題ないが、切符の枚数が増え煩雑となってしまう。そのため連続乗車を適用し上野(郡山)会津若松と、会津若松(郡山)福島の2行路・2枚の乗車券を発券し対応する。2行路のいずれも営業キロ101kmを超えているため学割の対象となる。

 往復と連続は複数枚発券されるため、制度が分かっていればそれぞれ片道で購入しても問題ないが、1行路ごとに学割証が必要となるので、全行路が学割証1枚で済む往復や連続を利用することが好ましい。



4 翁島〜久喜の往復学割乗車券

帰り分。有効期限が往復分加算されている


4.3. 有効期限と途中下車

 JRの場合、101km以上200km以下の乗車券は有効期限が使用開始日から2日となる。さらに400kmまでは3日、600kmまでは4200kmごとに期限が延びていくので、行路途中で途中下車をし宿泊や観光などが可能である。なお、往復乗車券・連続乗車券は全行路に応じて期限が延びる。たとえば201km以上400km以下の区間の場合、片道の場合期限は3日だが往復だと6日に延びる。

 なお、私鉄の場合はどのような距離であっても有効期限当日限り・途中下車前途無効、つまり改札を出た時点で乗車券が無効となる場合がほとんどなので注意が必要である(図5



5 近鉄の学割乗車券

有効期限は当日のみ、途中下車も不可である


5. 学割乗車券の応用

 学割が適用されるのは101km以上であるが、なにも安上がりになるのは101km以上だけではない。100km以下であっても、利用区間の通常料金よりも101kmを越える区間で学割を適用した料金のほうが安ければ得となる。そしてこの方法を利用すると、在来線に350円を足すだけで新幹線に乗ることのできる区間が存在する。

 旧東北本線である盛岡〜八戸間は、並行する新幹線の開業により第三セクターに移管された区間である。第三セクターは独立採算で運営しなければならないため、運賃が高額になりがちである。実際、盛岡〜八戸の運賃は3040円する。一方、盛岡〜八戸で新幹線を利用すると、営業キロは96.6km、乗車券1660円・特急券1840円・計3500円となりこのままでは学割は適用されない。そこで乗車券を新幹線経由で盛岡〜本八戸で購入すると営業キロが102.1kmとなり学割が適用できる。すると通常料金1940円が学割乗車券だと1550円となり、特急券分を加算すると3390円となる。在来線経由だと先述の通り3040円なので、差額350円で新幹線に乗れることになる。

 盛岡〜八戸間は18切符での乗り通しが認められていない区間なので、長期休暇中に北へ向かう際には組み合わせて使うと重宝する方法だと思われる。新幹線を利用するため1時間近く行程も短縮できるため、乗り継ぎする列車の選択肢も増えることだろう。なお、本八戸に行かない限りは切符は回収されないので、記念にとっておくか窓口に渡して回収して貰うなどしよう。

 他にもこのような事例が存在している可能性もあるので、調べてみると面白いかもしれない。


6. おわりに

 学割と長期休暇は学生の特権である。学割自体のそもそもの目的は帰省対応であるが、特段それに縛られる必要はない。是非機会のあるうちに全国各地の様々な場所を訪れ、様々な風景・文化・人間・空気に出会って欲しい。もしこの記事がそういったことのきっかけとなれば幸いである。


参考文献

・東日本旅客鉄道株式会社 割引乗車券

https://www.jreast.co.jp/kippu/0701.html 2016年月参照

・東日本旅客鉄道株式会社 営業規則

https://www.jreast.co.jp/ryokaku/02_hen/02_syo/02_setsu/index.html#28 20169月参照

・証明書自動発行システム PAPYRUSMATE V

http://school.uchida.co.jp/index.cfm/20,0,76,299,html 20169月参照

・東日本旅客鉄道株式会社

乗車区間が1周を超える場合または乗車区間が重なる場合の運賃

https://www.jreast.co.jp/kippu/08.html 20169月参照

JRおでかけネット 切符のルール

https://www.jr-odekake.net/railroad/ticket/guide/02a.html 20169参照

・小布施由武(2015)『JR旅客営業制度のQ&A 株式会社自由国民社


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