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鹿島臨海鉄道
−首都圏の気動車と貨物の花園−
交通システム工学科3年 4059番 Y. S
1, 路線概要
鹿島臨海鉄道は大洗鹿島線と鹿島臨港線を営業する鉄道会社である。
大洗鹿島線は水戸駅と鹿島サッカースタジアム駅を結び、総延長は53.0km。実際の運行体系としてはJR鹿島線の鹿島サッカースタジアム駅から鹿島神宮駅まで乗り入れ、水戸駅と鹿島神宮駅を結ぶ形となっている。また、こちらの路線は旅客輸送が主であり、かつて行われていた貨物輸送は現在全く行われていない。
運行頻度は水戸〜大洗は日中30分に1本ほど、大洗〜鹿島神宮は1時間に1本ほどであり、1日2本のみ新鉾田発着の列車が設定されている。列車は基本的に2両編成であるが1両編成、3両編成も存在し、サッカーの試合が行われるなど臨時の多客輸送の際には4両編成が走ることもある。
線路は25mの定尺レールであり規則的な継ぎ目音、またディーゼル車特有の振動やATS-Sのベル音なども相まって首都圏に居ながらにしてローカル線の旅情を楽しめる。
写真1 大洗鹿島線の中心駅、大洗駅。本社と車両基地がある。
鹿島臨港線は鹿島サッカースタジアム駅と奥野矢浜駅を結び、総延長は19.2km。旅客輸送主体の大洗鹿島線に対してこちらは鹿島臨海工業地帯を中心とする貨物輸送が主である。一方で旅客用車両が検査や停泊のために神栖駅へ回送されることがある他、ここ数年は1年に一度臨時で旅客列車が運行される。
写真2 鹿島臨港線の中心駅、神栖駅。貨物駅である他、旅客車両の留置、検査も行う。
写真3, 4 神栖で入場中の6000形。検査や車体塗装などを行う。
2, 路線沿革
大洗鹿島線は1985年3月14日に開業。もともと大洗鹿島線は国鉄の常磐線迂回ルートとして計画・建設されており、特急列車の運行も予定されていたため全線にわたって高規格な路線形状になっている。しかし、国鉄の経営状態悪化により地方路線の新設が困難になったため、第三セクターの鹿島臨海鉄道で運営される運びとなった。ちなみにこの路線は、国鉄が手放した地方交通路線の中で初めて開業に至った路線でもある。また、1990年代前半まで、海水浴シーズンにJR常磐線からキハ58系を使用した快速おおあらい号が乗り入れていたこともある。
鹿島臨港線は1970年7月14日に開業。かつては鹿島臨港線でも1978年より定期旅客輸送が行われていたが1983年11月30日をもって廃止されている。これには、鹿島臨港線では旅客営業を行う予定は最初からなく、成田空港へのジェット燃料暫定輸送による貨物列車増加に対する地元への見返りとして設定されたものであったことから、ジェット燃料輸送の廃止に伴い早々に旅客輸送も廃止になった経緯がある。現在、成田空港へのジェット燃料は千葉港からのパイプラインによって運搬されている。
3, 鹿島サッカースタジアム駅について
当駅は鹿島臨海鉄道とJR東日本の境界駅である。所属はJR東日本であるが、旅客営業は基本的に鹿島臨海鉄道の車両、社員により行われている。もともとは貨物駅であり旧称は北鹿島駅であったが、鹿島サッカースタジアムの開業に伴い1994年より駅名改称とともに旅客営業を開始した。ただし、旅客扱いはスタジアムで試合が行われる日のみ実施、普段は貨物駅としてのみ機能しており旅客列車は通過している。
写真5 駅の出入口で、跨線橋になっている。JR所属の駅であることがわかる。
鹿島臨港線とJR線を直通する貨物列車は当駅で折り返し、機関車付け替えを行う必要があるため構内は比較的広い。
写真6 駅の跨線橋から鹿島神宮方面を望む。右奥は鹿島神宮方面、左奥は神栖方面へ通じている。
写真7 大洗・水戸方面を望む。ホーム全体の様子、留置線の配置がわかる。
4, 車両
大洗鹿島線では6000形、8000形、鹿島臨港線ではKRD形、KRD64形ディーゼル機関車が現在使用されている。かつては旅客用車両として1000形、2000形、7000形が所属していた。
(1)6000形
1985年の大洗鹿島線開業時から使用されている車両。6001〜6019の19両が製造され、第三セクターとしては珍しく国鉄の気動車標準サイズの20.5m級の車体が採用されている。エンジンなどの走行系の機器類は同時期に製造されていた国鉄キハ37系と共通である他、ブレーキ機器なども国鉄の気動車と共通であったため併結運転も可能である。(実際にかつて乗り入れていたキハ58系と併結した実績がある。)6009以降は側面に行先表示器が追加されている。
車内は基本的に転換クロスシートで、一部がロングシートである。床下にバス用のクーラーを搭載しており天井にはその吹き出し口および扇風機も装備しているため、夏の車内の空調も確保されている。このように第三セクターの気動車としては比較的豪華な車内設備が特徴の1つといえる。
写真8 6000形気動車(6001+6018)。大洗駅にて。
2010年頃より前面と側面の窓周りの黒塗装を省略した新塗装化が進んだが(少なくとも6002, 6008, 6009, 6012, 6013, 6015は新塗装化されている)、ここ数年また元の塗装に戻されており、2016年7月現在新塗装車は6002と6008の2両のみで、うち6008は休車状態であるため事実上1両となっている。それとは別に最近は行先等の書かれたプレートを差し込むための側面サボ受けの撤去が進んでいる。
2016年3月、後継となる8000形の導入で6012が廃車となった。
写真9 現在稼働している唯一の新塗装車となった6002(大洗駅にて)。JAほこたの広告が貼られている。
もう1両の新塗装車である6008は神栖駅で長く留置されており稼働していない。
写真10 廃車となった6012(水戸駅にて)。大洗めんたいパークのラッピングがされていた他、新塗装であった。現在は神栖駅に留置されている。
(2)8000形
6000形の後継として2016年から導入された新型気動車。行き先表示器にLEDを採用、片側3ドアの車体を持ち、「鹿島灘の海と空をイメージしたブルー」「砂浜と大地をイメージしたブラウン」「地域に支えられ発展してゆく大洗鹿島線をイメージした赤色のライン」の3色を車体色としている。車内はオールロングシートで、LCDの運賃表示器やドア上にLED式車内表示器を設置した。新潟トランシスの製造であり、2016年7月現在1両のみの在籍だが今後1年に1両のペースで13両を投入する計画である。なお、ブレーキ方式などの違いから6000形と併結して営業運転することはない。
ちなみにこの車両の車外の行先LED表示器、筆者の調べによればシャッタースピードを1/80程度までには落とさないと文字が切れるようである。
写真11 8000形気動車。6000形とは打って変わって軽快な外観である。
(3)1000形
かつて鹿島臨港線の旅客営業の際に使用されていた。国鉄のキハ10系を譲受したもので2両が在籍、車体塗装を変更した以外はほぼ種車そのままであった。鹿島臨港線の旅客営業が終了して間もなくの1984年に廃車されたため、大洗鹿島線での営業運転に使用されることはなかった。
(4)2000
1985年の大洗鹿島線開業の際、6000形が必要数確保できなかったため国鉄のキハ20系を譲受して使用したもので、4両が在籍していた。トイレが設置されたほか、塗装、灯具類が変更されたため種車とは大きくイメージが異なる。
6000形の増備により1991年には全車廃車となった。その後は茨城交通湊線(現・ひたちなか海浜鉄道湊線)に譲渡され塗装変更の上で使用されていたがこちらでも2006年までに全廃されている。
(5)7000
1992年に快速向けの車両として製造された。2両編成1本の在籍で、所有は茨城県である。1998年までは快速「マリンライナーはまなす」として使用されていたが、その後は臨時列車でたまに走る程度となった。足回りの走行機器は6000形と同一であったため、設備を充実させた故に車重の重かった7000形は走行性能がやや低かった。
2010年を最後に営業運転から離脱、長く神栖駅で留置されていたものの2015年に個人へ売却された。
大洗鹿島線沿線がハマナスの名観光地であることが列車名の由来である。
(6)KRD
国鉄DD13形をベースに製造された。かつてはKRD1〜5の5両在籍したが現在はKRD5のみの所属であり、これも運行頻度は後述のKRD64より低くなっている。
(7)KRD64形ディーゼル機関車
KRD形の後継として製造され、2両在籍する。京葉臨海鉄道KD60形と基本的には同一のものである。現在の鹿島臨港線の貨物列車の主力牽引機である。
写真12 KRD64形2機。神栖駅にて。
5, 車体ラッピング、アニメとのコラボについて
鹿島臨海鉄道の旅客車両は沿線の企業の広告をメインに車体ラッピングが多いのも特徴であり、常磐大学、クリーニング専科、大洗めんたいパーク、アクアワールド大洗水族館など種類も豊富である。2016年3月までは6000形全19両中10両がラッピング車という状況であった。2016年7月現在はめんたいパークラッピングの6012が廃車になったため、全18両中9両となっている。また、東日本大震災後はがんばっぺ茨城のステッカー(鹿島臨海鉄道自体も東日本大震災で線路土台崩落などの被害があった)、2015年からは大洗鹿島線の開業30周年記念ステッカーを貼ったうえで運行している車両がいる。
写真13 常磐大学ラッピング車(6015、大洗駅にて)。
6015は以前新塗装であり、めんたいパークラッピングが行われていたことがあった。
写真14 大洗駅に留置されるAQUA WORLDラッピング車2両。水色の全面ラッピングは6007、部分的なラッピングの車両は6019である。
写真15 AQUA WORLD全面ラッピング車の6007(水戸駅にて)。本数の少ない新鉾田行きである。
写真16 クリーニング専科の全面ラッピング車(鹿島神宮駅にて)。黄色と黒により派手な印象を受ける。
2012年11月以降は大洗を舞台にしたアニメ「ガールズ&パンツァー(通称:ガルパン)」のラッピング車が運行されており、最大で3両がラッピングの上、運行されていた。これらの車両は車外のみならず車内にもガルパン関連のステッカーが貼られているのも特徴である。コラボ切符の発売も行われており、大洗の町自体のアニメとのタイアップも相まってアニメファンの集客に一役買っている。余談ながら、大洗を通るバス「茨城交通」でもガールズ&パンツァーのラッピングが行われている。
最初にガルパンのラッピング車となった6006号車は2016年8月をもって入場、ラッピングが解除されることになった。
写真17 ガルパンラッピング2号車(6018)と3号車(6011)の併結列車(鹿島サッカースタジアム駅にて)。ガルパンラッピング車の運行予定は鹿島臨海鉄道公式ホームページで随時掲載されている。
写真18 ガルパンとのコラボ切符の一例。これは通年大洗駅で購入可能で、ひたちなか海浜鉄道湊線の一部と大洗町内を走る茨城交通バスに乗車可能。
他にも、稀に限定切符が発売されることがあり、公式サイトやTwitterで告知されている。
写真19 茨城交通のガルパンバス1号車。茨城交通のバス全体の通し番号では360号車で、元西武バスの富士重工7Eである。ガルパンの出演声優による車内放送が行われることもあった。こちらのガルパンラッピング車は4号車まで存在する。
茨城交通の那珂湊営業所で許可を得た上で撮影。
表1 鹿島臨海鉄道6000形各車仕様一覧(2016年7月現在)
番号 |
塗装 |
備考(ラッピングなど) |
6001 |
標準塗装 |
|
6002 |
新塗装 |
JAほこたラッピング |
6003 |
標準塗装 |
アクアワールドラッピング。WC側の側面のみ |
6004 |
標準塗装 |
|
6005 |
標準塗装 |
|
6006 |
標準塗装 |
2016年8月までガルパン1号車 |
6007 |
|
アクアワールド全面ラッピング |
6008 |
新塗装 |
休車。神栖で留置中 |
6009 |
標準塗装 |
|
6010 |
標準塗装 |
|
6011 |
標準塗装 |
ガルパンラッピング3号車(劇場版) |
6012 |
新塗装 |
めんたいパークラッピング。廃車 |
6013 |
|
クリーニング専科全面ラッピング |
6014 |
標準塗装 |
|
6015 |
標準塗装 |
常磐大学ラッピング |
6016 |
標準塗装 |
|
6017 |
標準塗装 |
大洗鹿島線のOKLロゴが残る |
6018 |
標準塗装 |
ガルパンラッピング2号車 |
6019 |
標準塗装 |
アクアワールドラッピング |
6, その他、JR線とのかかわりなど
鹿島神宮駅では大洗鹿島線からの一部列車とJR鹿島線の列車との乗り換え接続が図られており、10分以内でスムーズな乗り換えが可能である。
写真20 鹿島神宮駅に停車する6000形2両編成。
通称「鹿島貨物」と呼ばれる貨物列車は鹿島臨港線の神栖駅発着である。2016年3月のダイヤ改正以降JR線内での牽引機がEF65形1000番台、通称PF型からEF64形1000番台に変更されたことがファンの間で話題になった。なお、鹿島貨物の牽引機はこれまでも幾度となく変更されており、今後またEF65に変わる可能性もある。他にもEF210、通称桃太郎も牽引を担当している。
神栖駅は貨物駅としての役割のみならず車両の解体なども行うことができる。そのため以前は廃車になった常磐線の車両が大洗鹿島線経由で神栖へ廃車回送されることが、近年では2011年12月にJR貨物のワム380000が神栖へ廃車回送されたこともあった。いずれも鹿島臨海鉄道の路線内ではKRDおよびKRD64形ディーゼル機関車が牽引を担当している。
7, 模型
NゲージはKATOより6000形の標準塗装と新塗装が、TOMIXから1000形が、TOMYTECの鉄道コレクションシリーズから2000形、譲渡車の茨城交通キハ201がそれぞれ製品化されている。KATOからはガルパンラッピング車1号車がイベント限定品として発売されたこともあった。いずれもプラスチック完成品である。ワールド工芸から7000形が発売されたこともあったが入手は非常に困難である。
16番はエンドウより6000形標準塗装の側面行先幕の有無による2種類、及びガルパンラッピング車1, 2号車が発売された。真鍮製である。
他にもバンダイからBトレインショーティーの6000形ガルパンラッピング1, 2号車と標準塗装車が発売されている。これにはアニメに登場する1/150の4号戦車が付属する。
8, 参考文献 2016年8月参照
鹿島臨海鉄道 公式サイト
ひたちなか海浜鉄道 公式サイト
http://www.hitachinaka-rail.co.jp/
鉄道ホビダス 編集長敬白
http://rail.hobidas.com/blog/natori/archives/2016/02/16_28.html
鉄道ホビダス RMMスタッフ徒然ブログ
http://rail.hobidas.com/blog/rmm/archives/2006/07/post_70.html
鉄道ホビダス 消えた車輌写真館
http://rail.hobidas.com/photo/archives/2015/12/_7000_1.html
レスポンス
http://response.jp/article/2016/01/17/267957.html
鉄道ファン rail.jp鹿島臨海鉄道項
http://railf.jp/news/mintetsu/kashima-rinkai/
駅から時刻表
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