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一風変わった駅 Ver.3


交通システム工学科 3 4109 K. M

1.はじめに

EXPRESSでは過去2年にわたって『一風変わった駅』というテーマで記事を執筆してきたが、今回もVer.3として同じテーマで記事を書くことにした。

わが国には9267もの駅がある中、今まで10駅もの一風変わった駅を紹介した。今回は特にインパクトの大きい奥羽本線(山形線)4つのスイッチバック遺構駅と、土佐北川駅、宇都井駅を紹介する。

2.奥羽本線(山形線)4連続スイッチバック遺構駅探訪

奥羽本線は福島駅を起点とし、奥羽山脈を越え、山形、新庄を経て日本海に抜け、秋田、弘前を経て青森を終点とする484.5kmの営業キロを有す東北地方で代表される幹線路線である。そのうち福島〜山形〜新庄の区間には山形線という愛称がついており、現在同区間は山形新幹線との併用区間である。

山形線のうち福島〜米沢間は板谷峠を有す難所区間で、山を越えるために斜面をジグザグに登るスイッチバックが4駅連続で存在した。これは山形新幹線開通と同時に、トンネル掘削技術等が発達したことでスイッチバックは廃止された。このスイッチバック遺構駅に止まる列車は一日で上下線それぞれ6本しかないため、自動車到達困難な赤岩駅を除き他の3駅は車で探訪した。写真はいずれも20159月に撮影したものである。

(1)赤岩駅

赤岩駅は福島駅から山形駅へ板谷峠越えするとき最初にあたるスイッチバックがあった駅である。この駅は他の3つのスイッチバックがあった駅のなかで最も秘境で、写真1のように駅に繋がる道は未舗装の軽自動車1台分の幅員があるかないかの道しかなく、路肩は脆弱でガードレールが無い箇所があり、集落までつづら折りが続くという情報があった。このため車での訪問は危険だと判断し、この駅へは隣の板谷駅から鉄道を使って訪問した。

この駅は秘境駅として有名であり山奥の豪雪地帯にあるため、冬季は駅と集落を繋ぐ道が雪で埋もれ、利用客が遭難し最悪の場合凍死等の危険性が予測されたため、普通列車も含めたすべての列車が当駅を通過する。

赤岩駅のスイッチバック遺構は写真2のようにスイッチバック時代に使われていたホームの面影が残っており、写真3には急勾配の本線から駅構内へ出入りするための加速線と呼ばれる線路の古びた架線柱が写真4の現在の赤岩駅ホームの奥にあった。



写真1 赤岩駅と集落を結ぶ道



写真2 赤岩駅旧ホーム跡



写真3 赤岩駅構内加速線跡



写真4 現在の赤岩駅ホーム


(2)板谷駅

板谷駅は周辺が旧米沢街道の宿場町だったことから4つのスイッチバック遺構駅の中で駅前が最も栄えており、郵便局や商店など集落として一定数の民家がある。利用客数のデータは無いが、この集落に住む人々には生活の足としてこの駅と山形線を利用していると思われる。車でも国道13号から立派な連絡道路があり、アクセスは容易である。

現在の駅への道は写真5のスイッチバック時代に現役だった信号機と元々線路と分岐器があったスノーシェルターの中を通り、スノーシェルターの中にあるホームが現在のホームである(写真6)。スイッチバック時代の板谷駅は、駅舎と駅広場がありホームと線路は写真7のように雑草で茂っている。列車は本線から写真8のように分岐し写真5のスノーシェルターを通過し、写真7のホームでお客さんの乗降と折り返し作業をしていた。



写真5 旧板谷駅へ通ずる線路のスノーシェルター



写真6 現在の板谷駅ホーム



写真7 板谷駅旧ホーム



写真8 本線と旧板谷駅構内への線路との旧分岐点

(3)峠駅

峠駅は森林の中にある駅で駅周辺には民家が二軒しかない。この二軒は峠の茶屋と呼ばれるお店と、峠の力餅の食事処である(写真9)。峠の力餅はかつてスイッチバック作業で数分の停車時間があり、その時間乗客はホームで立ち売りしている売り子から峠の力餅を買うのが恒例となっていた。これはスイッチバックがなくなった現在も、短い停車時間となったがホームでの立ち売りは継続している。

この駅はスイッチバック時代、写真10を見てわかるように大きなスノーシェルター内で本線から峠駅構内へ通ずる線路に分岐していた。同じ場所で加速線との分岐点も写真11のように写真10の反対側に通じていた。現在加速線だったところにはレールはなく、写真11の奥の方にあるトンネルがかつて加速線のあったトンネルである。写真10方向が米沢方、写真11方向が福島方であるが、福島方は本線、加速線共にトンネルである。

峠駅構内に到着する列車は、その分岐点からスノーシェルターを抜け、旧ホームに着く。写真12は峠駅旧ホーム側から撮影した駅構内へ通ずる線路のスノーシェルターの出口である。現在は駅の出入口となっている。写真13は峠駅の旧ホームや詰所があったと思える場所だが、雑草などで隠れていた。この先には駅構内終点の車止めがあるという情報もある。現在のホームは、写真14のように12線のスノーシェルターに囲まれた駅で、前述の駅構内への線路と本線、加速線の分岐点に当てはまる場所にある。



写真9 峠の力餅食事処



写真10 本線と峠駅構内へ通ずる線路との分岐点



写真11 本線と加速線との分岐点



写真12 現在の峠駅出入口



写真13 峠駅旧ホーム・詰所があった方向



写真14 現在の峠駅ホーム


(4)大沢駅

大沢駅は福島駅から米沢駅へ峠越えする際の最後のスイッチバック駅で、この駅前も板谷駅同様旧米沢街道の宿場町だったため集落と直結している。しかし、車での訪問は、峠駅程ではないが国道13号線から離れており、幅員も狭いためアクセスが良いとは言い難い。

駅構造は、スイッチバック時代に使われていた旧ホーム(写真15)からスノーシェルターを入り(写真16)、大沢駅旧ホームに通ずる線路と本線との分岐点(写真17)に現在のホームがある。現在のホームの米沢方には加速線があった古びた架線柱が見える(写真18)



写真15 大沢駅旧ホーム



写真16 駅出入口スノーシェルター



写真17 本線と大沢駅構内へ通ずる線路の分岐点



写真18 大沢駅旧加速線

3.トラス橋の中にホームある駅「土佐北川駅」(20163月訪問)

土佐北川駅は、岡山から高知へ繋がる幹線である土讃線の駅で、所在地は高知県と徳島県との県境付近の山奥にあると言える。駅は穴内川に架かる橋の上にあり、写真19は別の橋から土佐北川駅を撮影した写真である。

この駅に停まる列車は、高知方面が8本、岡山方面(列車は途中の阿波池田や琴平、多度津止まり)7(20168月現在)であり、駅周辺は民家が駅前に数軒と数分歩くと集落があり、生活の足としての利用客はちらほらいそうである。また、土讃線は単線であるが当駅は12線であり、当駅で列車行き違いや通過待ちが可能である。出入口は二つあり、集落へ繋がる出口と穴内川を阿波池田方に渡った出入口(写真20)があり、前者の出入口前には未舗装の駅前広場だと思われるスペースがある(写真21)。ホームは島式でとても狭いため、通過列車には注意が必要である。

写真22のように、トラス橋の中にホームがある駅は他になく、とても珍しいことで一部の鉄道ファンにはよく知られている。



写真19 土佐北川駅外観



写真20 土佐北川駅出入口(阿波池田側)



写真21 土佐北川駅広場



写真22 土佐北川駅ホーム


4.天空の駅「宇都井駅」(20163月訪問)

宇都井駅は島根県の日本海側にある江津駅から広島県の内陸の街である三次駅を結ぶ地方路線の三江線にある駅で、所在地は島根県であるが、ほぼ島根県と広島県の県境付近に駅がある。

この駅へは深夜に車で訪問したため夜中の写真しかないが、写真23より線路がとても高い場所に位置することがわかる。これが天空の駅と言われる所以である。両側が山に囲まれた駅であるためこのような駅構造になった。谷の部分には民家が数軒あるが、この駅に停車する列車は両方向4本ずつ(20168月現在)であり、とても少ない。地上から宇都井駅のホームへ上がるためには階段を116段登るしかほかなく、駅周辺の集落に住む人々にとっては不便といえる。階段を上りきると11線のホームがある(写真24)

宇都井駅を含めた三江線全線は、2018 3 月末をもって廃止されることが決定し、 2016 9 月末にJR 西日本米子支社から国土交通省中国運輸局に三江線の鉄道事業廃止の届けを提出した。その理由として、利用客の減少に歯止めがかからないことと、山岳部を走るので自然災害のリスクが看過できないというものだった。今後はバスが代わりの交通機関となる。



写真23 宇都井駅外観



写真24 宇都井駅ホーム


5.おわりに

普段首都圏に住んでいれば何気なく道と列車の結合点として通り過ぎていると思うが、結合点としての役目が消滅しそうな駅や、誰も、もしくはごく少数しか結合点として使わない駅もある。加えて路線自体消滅の危機がある状況にある路線もある。そんな中、普段当たり前に最寄り駅が存在する人はこのことをどう思うだろうか。これは鉄道駅までバスを利用するほど遠い人でも、いくら列車本数が少なくとも同様に思える。

長年利用していた最寄り駅がなくなってしまったら、不便になる以上の変化が起きると考える。最寄りの小さな駅が無くなったら、自家用車やバス等で近くの特急列車や新幹線が停車する大きな駅まで送り迎えすることになるが、地域によっては鉄道がない、もしくは通過しているだけというところもある。このとき、地元住民はバスがあれば隣町にある駅まで行くための利便性が担保されると考えるとしても、観光の観点から鉄道駅がある地域とバス停しかない地域とで、観光客には大きな意識の違いが生まれると感じる。

小さな鉄道駅について、「少ない利用客の為にある」という考え方は、その利用客のことを思っているとは言えないと考える。世間が「駅はその地域の発着点である」という意識でいれば、駅が存在している価値がわかりやすくなるだろう。当たり前に鉄道があり、当たり前に駅があるということを生活にしていると、そのありがたみ、重要性に気づきにくいからこそ意識を変えることも必要となってくるのではないだろうか。


【参考文献】20168月参照

l  時刻表 東日本旅客鉄道株式会社http://www.jreast-timetable.jp/

l  駅・鉄道情報/時刻表・運賃・列車編成 四国旅客鉄道株式会社http://www.jr-shikoku.co.jp/01_trainbus/jikoku/

l  JRおでかけネット 西日本旅客鉄道株式会社https://www.jr-odekake.net/

l  Googleマップhttps://www.google.co.jp/maps

l  島根・広島結ぶJR 三江線 再来年3 月で全線廃止に NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20160930/k10010713021000.html


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