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Verde Rayoの魅力
交通システム工学科 3年 4066番 T. F
1. 「Verde Rayo」という曲について
発車メロディーが普及し始めた頃に大量導入された曲の一つがこの「Verde Rayo」である。東洋メディアリンクスの曲で「Water Crown」や「Gota del Vient」などの曲と同時期にリリースされた。読み方は「ヴェールデ ラーヨ」、曲名はラテン語由来のスペイン語で「緑の光線」という意味である。東日本地域8番、「ヨコイチ」と呼んでいるファンもいる。聞く機会が多く、BGM的な感覚で耳にする機会がほとんどであるため聴き入ることは少ないと思うが、曲としてじっくり聞くと爽やかな曲調のなかに変化していく和音構成がどことなく高揚感や緊張感を高める。その効果が転調(曲のキーが変わること)によりさらに高められ、転調後の最後に美しいフィナーレとも取れる余韻が待ち構えている。そんなこの曲について、実は様々な種類が存在しているという簡単な紹介を書いてみようと思う。
2. 種類の紹介
以下では、Verde Rayoという曲の細かな種類や違いについて、それぞれ使用駅、秒数、紹介文という順でご案内したい。なお、ここでの書き方は全て筆者基準であり、紹介している他にも様々な呼び方が存在していることを留意していただきたい。
2-1. 近年標準となりつつあるヴァージョン
≪主な使用駅:大宮駅≫【秒数:約19秒】
近年、放送装置の更新等で他のヴァージョンからこのヴァージョンへの更新が多くなっている。スピーカー等の影響にもよるが、全体的にはっきりとしたクリアな音源で、音質が良い。余韻が長いのが特徴。
動画1 津田沼駅にて撮影・収録したもの
動画2 津田沼駅にて後日密着収録を行ったもの
2-2. 類似しているものの低音の強調されているヴァージョン
≪主な使用駅:東神奈川駅≫【秒数:約19秒】
横浜線を中心に大規模投入されたヴァージョンのひとつ。音程は2-1で紹介したヴァージョンのものと酷似しているが、音質が悪いためかキンキンと主旋律が主張し、かつ伴奏パートもチャカチャカとしており、あまり広がりを感じることはない印象である。
動画3 2011年頃に横浜線の複数駅にて収録したもの
2-3. 低音ヴァージョン(消滅済み)
≪主な使用駅:津田沼駅、熱海駅≫【秒数:約20秒】
初期のATOS放送が更新される頃に消滅してしまった、音程が標準のものと比べ半々音ほど低いヴァージョン。テンポも遅いため他のものより尺が1秒ほど長い。音質は比較的悪く、一般的な駅メロ音質といったところである。
動画4 熱海駅で収録したもの
2-4. 高音ヴァージョン
≪主な使用駅:高尾駅≫【秒数:約18秒】
2-3で紹介した低音ヴァージョンを早回しにし、半音ほど音程を高くしたもの。音質も2-3と同じ。少し早いので1秒ほど他のものより尺が短く、「早テンポver」と呼ばれることも多い。
動画5 現在では更新され橋本駅では聞けなくなってしまった
2-5. やや低音ヴァージョン
≪主な使用駅:藤沢駅≫【秒数:約18秒】
音質は悪くないが、なんとなく籠ったような曲調のヴァージョン。テンポも遅いため「遅回しver」「遅テンポver」と呼ばれることもある。2-4で紹介した高音verもそうだが、余韻の最後が切れているようなのはデフォルトである。
動画6 使用駅が少ない印象のあったこの曲も更新により消滅しかけている
2-6. オーケストラヴァージョン(Verde Rayo V2)
≪主な使用駅:東京駅≫【秒数:約25秒】
2-5までで紹介してきたヴァージョンのものは音質の細かな違いであったり、音程やテンポの差などについての紹介であったため区別がつきにくかったりという方も少なくないだろう。しかし、2-6で紹介する「Verde Rayo V2」と呼ばれるものについては、まず音源がオーケストラ調になっているため誰でも違いがわかるはずだ。次に、細かな旋律構成が異なっており、楽譜に起こした状態で比較すると面白いのだが、ここでは軽い紹介程度にしておく。そして、ここまでの同曲においては1度しか転調が存在せず、そのまま余韻へ突入していたがV2においては転調が2回存在する。そのため約秒と長くなっており、フルコーラス(曲が終わりまで流れきること)に出くわす機会は少ないが、流れきった際の感動(?)は他のヴァージョンよりも多く感じ取れるはずだ。東京駅地下ホームに響き渡る雰囲気はとても良いものである。この曲は総武本線の佐倉駅においても使用されている。
動画7 ヴァージョン違いの中では最も有名である
2-7. エンドレスヴァージョン
≪主な使用駅:巌根駅≫【秒数:約44秒】
さて、ここではVerde Rayoのエンドレスヴァージョンについて紹介する。ここまでの流れで“エンドレスヴァージョン”をイメージすると、延々と転調を繰り返していくような予感がするが、実際には同じ調でひたすらループし続けるというものである。一応6ターンがフルコーラスということになっており、鳴り終わると和音でのしめくくりは無く、そのままの余韻のみが残るものとなっている。一時、どこの駅でも採用されていない状態にあったが、放送装置の更新により発車メロディーの新規導入がなされた内房線の巌根駅にて復活した。筆者も実物の収録へと足を運んだが、1時間以上粘って1ターン鳴らないというのが実情であった。滅多に鳴ることのない(と思われる)この曲について、せっかくなのでフルコーラス鳴るイメージを再現したMIDIファイルを作成した。同じものの繰り返しとなるため飽きが来るとは思うが、気合を入れて再現したので、よろしければ動画後半も見ていただきたい。
動画8 巌根駅を初めて訪れた際の音源にMIDI再現ファイルを加えたもの
動画9 再訪した際に収録したもの
2-8. テイチクによるアレンジヴァージョン
≪主な使用駅:なし≫【秒数:約17秒】
「JR東日本駅発車メロディー・特急車内メロディー 音源集 山手線全駅+α~」CDに収録されているオリジナルのヴァージョン。AmazonのCD販売用Webページ(*参考資料部分にリンク貼付)にて試聴が可能である(トラック41番の2曲目)。実際に駅で流れたことはなく、このアレンジ自体が架空のものとなっている。理由は不明だが、後に販売された「駅メロ ベストセレクション 〜発車メロディ編〜」では正規のヴァージョンとこのヴァージョンのものがどちらも収録されている。曲の構成としては1ターン目終了後に転調はするものの、2ターン目終了後の和音による締めくくりがないのでエンドレスヴァージョンの要素も入っている謎なアレンジとなっている。
動画10 CD音源から引用・録音したもの
2-9. テイチクによるVerdeRayoV2のアレンジヴァージョン
≪主な使用駅:なし≫【秒数:約28秒】
上の2-8同様、こちらもCDに収録されているものでテイチクによる独自アレンジが施されている。オリジナルのV2よりも余韻が長い。V2を名乗っているもののオーケストラヴァージョンというよりかはシンセヴァージョンといったほうが良さそうな音源である。2-8で紹介したものは比較的実物に近い音源であったが、このV2アレンジヴァージョンは完全に別物となっている。実物が高く評価されているためか、ファンの間ではあまり良い評価を受けていないようだ。
動画11 動画10同様CD音源から引用・録音したもの
2-10. 都営大江戸線の発車サイン音「素直な心」
≪主な使用駅:大江戸線各駅≫【秒数:約6秒】
こちらはVerde Rayoとは別の楽曲だが、似たような曲調であることから紹介させていただいた。全くの別物であるが、転調を一度したのちに和音で落ち着くあたりの雰囲気が似ている。実は、ピアノの練習曲集「ブルグミュラー」に載っているものが元になっている。接近放送等が流れる駅のスピーカーではなく、ホームドアに埋め込まれている開閉チャイムの流れるスピーカーより再生されるため収録は容易であるが、音質は言うまでもない。余談ではあるが、音源がMIDIそのままのような気がしたので動画最後には再現したものを掲載した。
動画12 雰囲気が似ている同曲とMIDI再現ファイル
3. まとめ
ざっくりと紹介をしてみたが、先ほども述べたようにこれは筆者が区別している呼び方であるため、正式にはさらに細かい種類や部類分けもあると思われる。また、先に述べた通り発車メロディーはこまめに変更されたり、放送装置の更新などによりヴァージョンが変更になったりという可能性も大いに存在する。あくまでも参考までにしていただき、今後耳にする機会があれば、 “これはどのverに当たるのだろう?”程度に覚えていただき関心を持って頂ければ幸いである。
4. 参考資料・注意事項
「鉄のバイエル」鉄道発車メロディー楽譜集JR東日本編(松澤 健・著 ダイヤモンド社)
(*)…Amazonの公式通販サイト 平成28年9月参照
「JR東日本駅発車メロディー・特急車内メロディー 音源集 山手線全駅+α~」
記事中の動画・音源については全て筆者撮影・収録・編集。
CD音源等はライン録音にて収録したものを一部加工(リバーブ効果を付加)して引用。
記事の転載・ファイルの二次利用は固くお断りいたします。
最終収録日…2016年10月6日
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